夏が来た。ラフを読む。
"うらやましいのォ、若いモンは。"
"ふってもふられても、何度も夏はくる"
"何度も熱い季節がのォ。"
夏が来た。ラフを読む。
言わずと知れたあだち充の傑作。「ラフ」
以前勧めたのはH2。
もちろん両作品とも素晴らしいの一言に限る。
ただ、ゆっくり、じっくりお互いの関係性を探るH2に対して、ラフはそれに比べるとスピード感のある話の展開だ。(早いかと言われると早いわけでもない。)
どうか、これから本番を迎える今夏に読んでほしい。
(ごめんなさい書ききれませんでした。でもまぁ、多少はね?)
テンポのいいラフ
先ほども書いたが、ラフは非常にテンポがいい。高校3年間を12巻に収めている。その要因は、1レースあたり1分弱の競泳が題材だからだろう。野球やサッカー漫画というのは、どうしてもテンポが悪くなりがちだ。しかし、ラフはその1分間のレース前後を丁寧に描いており、試合自体はオマケなのではないかと思ってしまう。
もちろんレースに絡むように話が進行していて、登場人物はそのわずか1分弱のために青春を捧げている。だから、おまけというのはあまりにも失礼なのである。失礼なのだが、オマケなのである。それぐらいレース前後が面白い。
主人公とヒロインの関係性
和菓子屋のライバルの大和(男)と二宮(女)がこの物語の主人公である。そして、彼らは犬猿の仲としてスタートする。この仲がいつの間にか変化していくというのが本筋である。
そこに邪魔ものや味方が現れるわけだが、その話は漫画にて。
主人公の大和は男らしさに加えて、相手を助けるために全力を出すタイプで、同性からも人気がある。
一方で二宮は明るくかわいい女の子として学校で人気を得ているが、個人的には大っ嫌い。H2を読んだ後に二宮はあまりにも後味が悪い。大和への対応を見ると、怒りの感情が芽生えてくる。
この漫画の魅力
この漫画の魅力は、わき役の男たちが男前すぎること。
寮生活を送る大和とこの作品とって、彼らはなくてはならない存在である。父親の父親らしさもまた目頭を熱くさせる。
次に思いつくのが大和の成長だろう。
伸び悩んでいた彼がいかにしてタイムを縮めていくのか。そこに大和の良さが前面に出ていてとても良い。
そしてやはり最後の読後感。真夏にキンキンに冷えたサイダーを飲んだかのような爽やかさで話が終わるのだが、結末一歩手前までの進め方が神がかっている。
もはや、この結末を読むためだけにラフを読んでほしい。
{おしまい(中締め)}
いつも読んでいただきありがとうございます。
以下ネタバレ含む考察を書いております。
以下ネタバレ付き考察
彼らが結ばれるのはきっと最後のカセットテープから想像できるだろう。おそらく今後は和菓子屋としての壁が立ちはだかるだろう。だけどどうにかするんだろうな。だって壁自体は二宮の父親だけだし。
ところで、ラフにはいくつか疑問点がある。
- 大和が勝つとどうして予想できたのか
- あの録音を聞いたのか
- 大和の親父との喫茶店での会話
最終巻だけでも疑問点が3つも出てきた。
1.大和が勝つとどうして予想できたのか。
これは全くわからない。日本新記録を出した仲西に勝つってどうやって分かったんだ?勝利の女神的な何かだろうか。私の好きな男だから勝つってことだろうか。甚だ疑問である。が、漫画なので良しとしよう。きっと勝利の女神的な何かだと思う。大和が二宮の演技の源であるように。
2.あの録音を聞いたのか
いやきっと聞いたんだろうけど、レース直後に結ばれると思っている二宮と、おそらくすぐには録音を再生しない大和のことを考えるとそれもまた高校生らしいちぐはぐな恋愛でいいと思います。
録音の最後には「応答せよ」と添えられていることから、二宮はきっとレースで応えてくれと思っているんじゃないかな~。これもすべてあだち充しかわからないことなんですけども。
3.大和の親父との喫茶店での会話
「遠慮してませんから。」という二宮の言葉の後に大和の父親の顔が書かれている。無表情の顔である。
この、「遠慮してませんから。」が、いったいどこに係っているのかわからない。仲西のケガにも遠慮せず大和が好きなのか、二宮の父親に遠慮していないのか、ただ送迎に遠慮していないのか…。その言葉を受けた大和の親父の表情は、無表情なのだが直前のコマの表情より口角ががっているようにも見える。大和の父親的には、「遠慮してませんから。」が嬉しかったのかもしれない。だから仲西や父親には遠慮してないが正しいのだろう。その後すぐ記者に漏らすのが大和のおやじらしいが…。
こんな感じだろうか。
今年も夏が始まった。
この記事を書こうと思ってから丸2年が経っている。
書きたくて仕方がなかったが、実際は下書きのままだった。
暑い夏にぴったりの12である。
また読み返して夏を楽しもうと思う。
{おしまい}
いつも読んでいただきありがとうございます。