TENの考察日記

楽しく書いてるので気楽に読んでね。

【考察】あだち充「H2」について

はいどうもTENです。

お待たせしました。

 

 

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 あだち充最高傑作「H2」について考察をこれからまとめたいと思います。以下、多少のネタバレを含みますが、お気になさらず。なぜなら、結末を知っていても鳥肌を立ててしまう素晴らしい作品だからです。

 

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では早速。

 

 

はじめに

 皆さんに"サンデーうぇぶり"というアプリをダウンロードしてほしい。これで読めば物語が終わるまで無料で読むことができる。ダウンロードをぜひ。

 そしてこのアプリで読むことのもう1つの利点が各話の感想を読者が書き残しているということ。これがあることで大事な伏線をしっかりと見逃すことなく読み進めることができる。そして他の人と考え方が異なることを実感できて面白い。「あ、このシーンはこう解釈する人もいるんだ~」と感じるだろう。

 

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「H2の考察」

 ここからは「H2」のいくつかの疑問点を解消していくこととする。ただ、先ほども述べたが、かなり人によって解釈が異なる。特にこの作品はどう感じてもその考え方に良し悪しはない。なぜなら本当の意図は、あだち充にしかわからないから。だから読者の感じたように感想を持っていいとTENは思う。

 

 結局?

 一部の人は、決勝戦が書かれていないことによって不満を漏らしているが、TENは準決勝で終わることに意味があったのだと思う。今から書くことは「なぜ決勝戦がないのか。」だ。

 主人公の比呂を擁する千川高校は準決勝で優勝候補の明和一と対戦する。この高校には日本の4番と言われる大親友の英雄がいる。物語の中では"事実上の決勝戦"として書かれているのだが、これが決勝戦ではない理由としてまずひかりが関係していると考えられる。

 英雄は準決勝で比呂と野球ではなくひかりをかけての勝負をしていた。(比呂はその勝負に付き合ってあげた構図。)これを決勝戦でやるには、詰め込む要素が多すぎた、また誤解を生みやすいのではないだろうか。あくまでも「H2」は甲子園優勝を目指す物語なのではなく、男女の青春を描いた作品なのだ。「深紅の優勝旗は二の次」という意味をバスのコマに当てはめると納得がいく。──────そして決勝戦の結果も予想がつく。

 

 大ファールと高速スライダー

 次に英雄と比呂の最終勝負での出来事。英雄は比呂の渾身のストレートをスタンドまで運ぶ。が、なんと、いきなり突風が吹いたためファールの判定となった。そしてファールになった瞬間その風はやんだ。明らかに不自然な風である。この風を偶然とみるか、ひかりの願いか、、それとも亡くなったひかりのお母さんか。これは亡くなったひかりのお母さんと考えるのが妥当だろう。ひかりのお母さんは生前「英ちゃんには内緒だけど、おばさんは比呂ちゃんの応援だからね」と言っている。TENはこれが関係してるのではないかと思っている。比呂は「英雄にも同じこと言ってんだろ」と言い、お母さんは笑顔で「そうだ」と返すがその描写はない。おそらくひかりのお母さんは本当に比呂のことを応援していたのではないか?今更ひかりの彼氏になれと言っているのではなく、比呂バカ(親バカ的な)として勝って欲しかったのだろう。

 

 そしてその先ほどのファールでツーストライクになった次の球。自慢の高速スライダーのサインを比呂自ら野田(キャッチャー)に出す。そして投げた球は、、ストレートだった。

野田「スライダーのサインだったぞ」
比呂「曲がらなかったんだよ。おまえこそなぜミットを動かさなかった?」
野田「――たぶん、曲がらねえような気がしてたんだよ」

 野田はなぜ曲がらない気がしたのか。誰が曲げなかったのか。比呂かそれともひかりか、、またひかりのお母さんなのか。

 

野田「投げさせられたんだよ。だれかに・・・な。」

 これはいったい誰だ?

 これはおそらく英雄だろう。英雄に対して第1打席、第2、3打席とかわし続けた比呂の本能の罪悪感とでも言おうか。勝つために徹していた比呂だが野球を楽しみたい本能が英雄との真っ向勝負を求めたのではないか?あれ、じゃあ投げさせたのは比呂の本能か。理性ではどうしようもない部分がスライダーを投げさせなかったのでしょう。はい。

 

 

 そして前回の続き

 前回の記事でこの画像を載せた。

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 なぜ野田はこんなにも悲しそうな顔をしているのか。この顔の意味を春華は理解できていない。理解できるのは比呂とひかりぐらいだ。

 ここで一度準決勝戦前の出来事を書こう。状況整理も兼ねてだ。ネタバレになるので読みたくない人は赤い文字が出るまで飛ばしてほしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

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 準決勝の前に英雄はこのようなことを言う。

  • 勝負に勝った方がひかりの彼氏になる。

 

 

これを聞いた野田は慌てて比呂にこのことを告げてしまう。ただ、ひかりは負けた方に情が行くことがわかり、比呂はこの勝負に必ず勝たなくてはいけない。

 構図としては

  • ひかりをかけた勝負だと思っているいるのが英雄(と野田)。

そして

  • 英雄とひかりのために勝とうとする比呂、

さらに

  • 英雄が負けるはずないと思っているひかり(本音は比呂に頑張ってほしい)。

このようになっている。

勝ってフラれるために戦う比呂。明和一の監督が違和感を覚えたのもこれが原因だろうか。

そして結果は、、、曲がらない高速スライダーで三振に取った比呂の勝ちだ。ここで三振に取り比呂は完全に未練を断ち切ることになる。ひかりもそれを受け入れる。

 

 

 

 

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 あいまいな関係を断ち切ることが決まり、比呂とひかりはただの幼馴染。これまでのようにいかないであろう未来に、あるいはこれまでの過去に思いを馳せてお互い涙を流す。それを見て野田はようやく理解することになる。そして浮かない顔をするわけだ。女房役として比呂のことは理解しているつもりだろう。カラオケで夏色を歌っている比呂が、カラ元気だということにも気が付いている。野田にとっては余計辛いだろう。春華の話を聞き逃すくらいに。

 

 たしかに比呂はひかりのことが好きだった。ただそれは、成長期が訪れて「そろそろ彼女でも作りますか。」となった時期である。高校生になった比呂はひかりに対して好意を寄せていたわけではない。初恋の相手として接していると考えるのが妥当だろう。そして、古賀春華がその思い出に上書きされていく。まっすぐに向けられた比呂への思いを少しずつ受け入れていく比呂。そしてひかりとの思い出を春華に書き換えていくのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 紙飛行機

 

 おそらく紙飛行機を投げたのはポジティブな意味ではなかったのだろう。涙の余韻と考えられる。そこに春華の「じゃ、(その紙飛行機の)スチュワーデスは私だ」という相も変わらずまっすぐな言葉。驚いた比呂だが、その後、朝日を浴びた比呂の顔にはなにか決意をしたかのように感じられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 高く飛んだ紙飛行機は二人の未来を映しているのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

{おしまい}

 

 

いつも読んでいただきありがとうございます。

 

 

 

 

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【追記】

 春華ちゃんは本当にかわいい。まっすぐで比呂のために怒ったり意地を張ったりする。これを尊いと表現するのであれば、きっとこれがそうなのだろう。