プロテニスプレイヤーが試合中にラケットを破壊する映像がSNSに流れてくる。
そこにはその行いに対して文句コメントをぶつけるアカウントであふれていた。

https://number.bunshun.jp/articles/-/852829?page=2より
このような一連の流れは今に始まったことではなく、このようなことが動画としてSNSに投稿されれば、その度に物議を醸していた。そしてそれらの論調に変化は見られない。
大多数の人間がその選手に対する誹謗中傷コメントを残している。
例えば、「2流」「プロとして恥ずべき」「野蛮」「DV予備軍」など、様々である。
私はそのようなコメントを残す彼らに対して怒りが込み上げてきた。
部活レベルであってもどうしようもない気分になるテニスの特性をもっと理解してからコメントするべきである。
テニスとは何か
孤独と向き合うスポーツ
テニスとは何か、これを考えるにあたり明確なのは「孤独」だということ。
テニスのシングルスでは、一度始まると試合終了まで側にいてくれる人はいない。
1時間から3時間ほど他者とのコミュニケーションは基本的に行われないのだ。
そして"す べ て"の責任が自分に降り注ぐ。
チームメートの責任というものがない。
ミスが続くスポーツ
試合が進むのは、基本的に相手か自分自身のミスが起点となる。
思ったところにボールが打てなかったら失点だ。
それはネットにかかったのか、コートの外側に着地したのか、相手に決められたのかは数秒で判明する。そしてそれらはすべて自分の責任である。
1時間から3時間ほど続けたがミス積み重なって勝敗がつく。
身体を酷使して思考するスポーツ
彼らはあの狭い空間を歩くことなくひたすら素早く動き続ける。
走行距離にすると5~12km 程度だ。
そしてボールの打ち合いは他の競技と異なり、比較的思考の余裕がある。
したがって、身体的疲労が蓄積されつつも、打つコース軌道を描いたり、ラリー中に数手先までプランを練るなど、頭を働かせる。
にもかかわらず、打ち損じでそのプランが崩壊するのだ。
比較的時間があれど、毎回毎回100km/h以上のスピードボールに対処するため、打ち損じなど頻繁に発生する。(サーブは200km/h。強打されたフォアハンドは190m/hも出る。)
観客までもが敵になる
対戦相手の地元であれば、声援も含めて不利な勝負になることは確かである。しかし、そうでなくても不利になることが多い。
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私の中でとても印象深いゲームである。
世界的なアイドルのフェデラーと悪童と称されるキリオスの熱戦である。この試合は、アメリカでの開催にもかかわらず、フェデラーの声援が終始圧倒している。キリオスがポイントを取っても観客のため息が響く場面もあるぐらいだ。
プレー中にもかかわらず観客のヤジに邪魔をされながらも孤独に戦い続けるキリオスをリアルタイムで観ていた当時の私は、悔しくて悔しくて悲しくて涙が出た。
休みがないスポーツ
プロのテニスプレーヤーは休むことが許されない。
なぜなら勝たなければ賞金が得られないからだ。
彼らの背中にはチームの家族と自分を養う責任がある。
そのために毎日毎日毎日世界のどこかで開かれている大会に出る必要がある。
早期敗退すれば次の大会のために移動し、勝ち残れば、負けるまでその大会で試合を毎日行う。(GSのみ中2日)
そして、単に賞金を稼ぐだけでなく、去年の成績(ランキングポイント)の失効を回避するために試合に勝ち続けなければならない。休めば休むだけポイント獲得が行われず、去年の成績に応じたポイント数が失効される。
ポイント数が失効されれば世界ランキングが下がる。すなわち初戦から強敵と戦う必要に迫られるため、その大会での予定獲得ポイントが見込めなくなる。
さらに、ランキングが下がれば下がるほどスポンサーからの支援が細くなるため、チームの維持や選手活動が困難になる。
このようにプロのテニスプレーヤーは引退するまでラットレースを続けなければならない。
最後に
ラケット破壊はもちろん褒められるものではない。
しかし、テニスがどういったものかわからないままラケット破壊を非難する人がいる。
テニスがどういったものか分かっていれば、到底そのような発言には至らない。
それに加え、自分が追い込まれるほどの立場に立てなかった人間が外野から喚く現象こそを恥じた方が良い。テニスに限らずだ。
たとえテニスを知らなくとも、一度でも死に物狂いで何かを行った人ならば、生ぬるい語彙で批判などできない。
それでもわからない人は、一度グリップを握ってコートに立ってみることをおすすめしたい。テニスに触れられれば、どのようなスポーツか少しでもわかるかと思う。
{おしまい}
Twitterでそのようなことをつぶやく人に限ってテニスをしてないどころか試合すら見てない。
そしてだいたい思考が浅い。他のスポーツはどうなのか、サッカー(削り)はどうなのか、野球(報復・バットなどの道具)などはどうなのか今一度考えてほしい。
テニスをしていてこのような考えを持っている人は部活ではなく試合経験の少ないサークル程度の活動であることが分かる。
そうでなければ、『けんかはどちらも悪い』という考えをかつて(今でも?)持つ人間。一番雑魚。
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